羽柴れな
迷蝶
昨日の嵐に身をまかせてきたのか
弱っている羽根の動き
不運にも
人並みに息苦しい山手線に乗っている
迷蝶
各駅ごとに
迷蝶を目で追い求め
人並みの動きに合わせ優しく保護し
山手線を降りた
羽根の振動から懐かし心が伝わり
改札に向かう足をとめ
小さな声で話しかけた
母さん
長い旅をして
今年もまた逢いにきてくれたのね
私にだけ見える
美しい羽根と黒ぶちの白い斑点
そして
大きく羽根をひろげた天女の舞
夏と秋のすれ違う間に
この手のひらから
迷蝶は
はかない愛を残し消えた
コスモスの文学